消費税の軽減税率がややこしい! その2・区分記載請求書等保存方式・適格請求書等保存方式編

経済

こんにちは!なすのつくだにです。

今回は地味ーに続いている税金ややこしいシリーズ第4弾を書こうと思います!
第3弾では軽減税率対象の範囲について、国税庁のリーフレットをもとに解説しました。
今回は請求書の書き方の変化や、各国の軽減税率の情勢から日本の軽減税率がどうか?といった部分について書いていこうと思います。


第3弾はこちら!
消費税の軽減税率がややこしい!ことについて記事にしています。

また、消費税率変更に伴う経過措置についても以前記事にしています!
よろしければご覧ください!

 


※あくまで僕が調べてややこしい!と思ったことを書き連ねている記事なので、
感想を見ている気分で読んでもらえると嬉しいです。
また、個人的な意見になりますので、もし誤っていても責任は負いかねます。
分からないものがある場合は税理士の方に相談してくださいね!

 

消費税率変更に伴う請求書の変化

まず、消費税率変更に伴う請求書がどのように変化するかを解説いたします。
2019年10月1日から仕入税額控除ができるための請求書・帳簿の要件が「区分記載請求書等保存方式」に変更になりました。また、2023年10月1日には「適格請求書等保存方式」という方式に変更されます。

仕入税額控除ってなに?

そもそも、「仕入税額控除」ってなに?ということについて解説いたします。
私たちが普段何気なく支払っている消費税ですが、これらは課税事業者(企業など)が代わりに納税しています。

【ざっくりした消費税の納税額】
納税額=課税売上額×税率-仕入控除額

「仕入控除額」という部分は他の事業者に支払っている部分です。
仕入控除額は支払った事業者の課税売上額となるため、他の事業者への支払額を控除することによって、各事業者は自身が付けた付加価値分だけの消費税を納付することとなります。


(図1 仕入税額控除の図)

この仕入税額控除を行うために、請求書・帳簿に書かなければいけない要件が定められています。
これを書いていない請求書だと余計に消費税を支払わなければならなくなり、もったいなくなるということですね!

(※仕入税額控除の要件・控除額の算出は他にも様々な決まりがあるのですが、今回の話題からはそれるので割愛します。)

2019年10月以前の方式(請求書等保存方式)

消費税における請求書の方式について、2019年10月以前は「請求書等保存方式」というものでした。
課税事業者は、仕入税額控除の適用を受けるために、次の事項が記載された帳簿及び請求書を保存することが必要となります。帳簿・請求書は7年間保存しなければなりません。ただし、税込みの支払額が30,000円未満ならば帳簿の保存のみで良いとされています。

帳簿の記載事項は以下の通りです。

1 帳簿の記載事項
(1)課税仕入れの場合
①課税仕入れの相手方の氏名又は名称
②課税仕入れを行った年月日
③課税仕入れに係る資産又は役務の内容
④課税仕入れに係る支払対価の額(消費税額及び地方消費税額に相当する額を含みます)

(中略)

2 請求書等の記載事項
(1)事業者に対し課税資産の譲渡等を行う他の事業者が、当該課税資産の譲渡などにつき当該事業者に交付する請求書、納品書その他これらに類する書類(中略)
①書類の作成者の氏名又は名称
②課税資産の譲渡等を行った年月日
③課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
④課税資産の譲渡等の対価の額(当該課税資産の譲渡等に係る消費税額及び地方消費税額に相当する額がある場合には、当該相当する額を含みます。)
⑤書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称

(後略)

「No.6497 仕入税額控除のために保存する帳簿及び請求書等の記載事項」 より

身近にあるものを見ると、「請求書」と呼ばれるものにはほとんど上記の①〜⑤の内容が書かれていることが分かるかと思います。それもそのはず、①〜⑤がなければ消費税以前にお金が支払われないのですから!

もし①〜⑤がなかったら…
①:どこの会社が作ったか分からない請求書となってしまい誰も支払わない
②:請求年月日がない請求書は信頼できない
③:何に対する請求か分からなければ、支払いようがない
④:いくら請求されているか分からなければ、支払いようがない
⑤:自身に向けての請求か分からなければ、支払いようがない

ということになり、請求書としての体をなさなくなります。
そのため、各事業者はあまり意識していなくても、請求書を作成すれば要件を満たすようなものでした。

2019年10月1日から区分記載請求書等方式に

2019年10月から消費税率の変更・軽減税率の導入に伴い、仕入税額控除方式も「区分記載請求書等方式」に変更されました。
仕入税額控除をするために、前述の項目に加えて以下の2点を請求書に記載しなければならなくなりました。
今まではあまり意識していなくても消費税法上、仕入税額控除できる請求書として認められていました。しかし、要件が追加されたことによって、意識しないと仕入税額控除できなくなったため注意が必要です。

軽減税率対象品目である旨

請求書の中に軽減税率対象のものがある場合は、その品目が軽減税率対象であることを明記する必要があります。
明記の仕方は、分かればどのような示し方でも良いようです。
多いのは、品目の右に「軽」や「※」などを付し、請求書の下に「『軽(※)』は軽減税率対象であることを示します」のように表記するパターンですね。各コンビニのレシートを確認してみたのですが、このように書いていました。
この他にも、請求書自体を軽減税率のものとそれ以外のものに分けてしまうことも認められるようです。


軽減税率については以下の記事で詳しく書いたので、よろしければご覧ください!

税率ごとに区分した税込金額

消費税率が変更になった関係で、1つの請求書の中で複数の税率が混在する場合が発生するようになりました。
そのため、1つの請求書に複数の税率が混在する場合は、税率ごとに区分して合計した税込金額を記載する必要があります。

追記について

なお、相手からきた請求書にこれらの項目が書かれていない場合もあります。(個人的には、個人商店などの小さい事業者さんで上手く対応できていないところが多いように思います。)
その場合は、受け取った側でこれらの項目(下図の赤く色が付いた部分)を追記することが認められています。


(図2 区分記載請求書の例)

所感

今まではあまり意識しなくても請求書を作成すれば消費税上も仕入控除できるような仕組みでした。しかし、消費税のために請求書の書き方・出力システムに大幅な変更をしなければならず、大きな負担を強いていると感じます。実際、個人商店や中小企業は対応が間に合わないところがあるようです。

また、追記することについても

・それぞれの請求書をチェックして
・もし内容に不足がある場合はこちら側で追記する

という作業が必要になります。
今まで全くなかった作業をする必要が生じてしまい、非常に手間になると思います。

2023年10月1日から適格請求書等保存方式へ

現在は前述した「区分記載請求書等保存方式」が導入されていますが、2023年10月1日から「適格請求書等保存方式」導入されます。仕入税額控除をするために、前述した区分記載請求書等保存方式の要件に加えて、さらに厳しい要件をクリアする必要が生じます。

適格請求書発行事業者登録が必要に

適格請求書を発行できるのは、適格請求書発行事業者に限られます。適格請求書発行事業者になるためには、税務署に登録申請書を提出し、登録を受ける必要があります。この登録を受けたら、「法人番号」を受け取ることができます。
請求書には、適格請求書発行事業者であることを証するために法人番号を記載する必要があります。
登録は2021年10月1日から提出可能になり、適格請求書等保存方式が導入される2023年10月1日から登録を受けるためには、2023年3月31日までに提出する必要があります。直前に出しても登録されないため、注意が必要です。

なお、課税事業者しか適格請求書発行事業者になれないため、フリーランス等の現在免税事業者となっている個人事業主にとっては消費税負担が発生することになるかと思われます。こちらについては、「所感」にて後述したいと思います。

記載事項の追加

また、記載事項についても、区分記載請求書等保存方式に加えて厳しい要件をクリアする必要が生じます。

法人番号

先ほども書いた通り、適格請求書発行事業者として認められた「法人番号」を記載する必要があります。このために、適格請求書発行事業者登録をする必要があります。

税率ごとの消費税額及び適用税率

区分記載請求書等保存方式では税率ごとに区分した税込金額を記載する必要がありますが、適格請求書等保存方式ではそれに加えて、税率ごとの消費税額と適用税率を記載する必要があります。

消費税額の算出方法も定められており、税率ごとに1回の端数処理を行うことが定められています。品目ごとに税額を計算・端数処理を行い、その合計額を消費税額とすることは今まで認められていましたが、適格請求書等保存方式では認められません。
ちなみに、端数処理に関しては四捨五入・切り上げ・切り捨てなど任意の方法が認められております。
一定期間の取引をまとめた請求書を発行することもあると思いますが、その場合でも適格請求書単位で1回の端数処理を行うため、期間ごとの端数処理は認められません。

帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合が狭まる

現状は、税込みの支払額が30,000円未満の取引ならば帳簿の保存のみで良いとされていますが、適格請求書等保存方式となると認められなくなります。
適格請求書等保存方式では、適格請求書の交付義務が免除される取引や従業員等に支給する出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当に係る課税仕入れなどに限られ、範囲は狭まります。

適格請求書の交付義務が免除される取引とは?

①公共交通機関である船舶、バス又は鉄道による旅客の運送(3万円未満のものに限ります)
②出荷者が卸売市場において行う生鮮食料品等の譲渡
③生産者が農業協同組合・漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林水産物の譲渡
④自動販売機・自動サービス機により行われる課税資産等の譲渡等(3万円未満のものに限ります)
⑤郵便切手を対価とする郵便サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります)

「消費税軽減税率制度の手引き」 より

今までは少額の取引については請求書がなくても仕入税額控除ができましたが、適格請求書等保存方式では少額の取引でも請求書や領収書を受け取り、保存する必要が生じます。
小口現金で済ませるような取引でも細かくチェックし、保存する必要が生じるため、経理担当者の負担がさらに増えることが予想されますね……。

立替金精算書がめんどくさい

適格請求書等保存方式導入後は、立替金処理に対する仕入税額控除が非常に煩雑になります。
立替えを受ける時に仕入税額控除するためには、立替えを行う者から立替金精算書を受領することで仕入税額控除ができるようになります。


(図3 立替金精算書)

この立替請求する企業は「立替金精算書」を発行する必要がありますが、この「立替金精算書」が非常に厄介です。
「立替金精算書」には、仕入税額控除可能なものか(適格請求書発行事業者からの仕入かそうでないか)や適用税率ごとに区分するなど、適格請求書の記載事項に準ずる内容を記載しなければなりません。
しかし、おそらくほとんどの企業が現状のままでは「立替金精算書」をシステムから発行するのが不可能ではないかと思います。こちらについては「所感」で後述します。

所感

まだまだ導入は先になりますが、すでに大きく負担が増加することが予想されますね。負担が増えそうな部分を事務作業面とシステム面で考えてみました。

事務作業面での負担

個人的には、事務作業面で大きな負担となりそうなのは

・少額取引
・免税事業者であった事業者が課税事業者になることによる税負担・申告負担の増加

です。

少額取引

1点目の「少額取引」については、前述した通り、少額でも適格請求書の要件を満たすように発行する必要があるため、日々の伝票のチェックがより細かくなり、負担が増えるという点です。

免税事業者が課税事業者になることによる負担増

2点目は、適格請求書を発行するためには、課税事業者になる必要があることによるものです。
この決まりにより、適格請求書等保存方式導入後において、免税事業者からの請求書は適格請求書ではなくなり、仕入税額控除ができなくなります。支払う側からすれば、仕入税額控除できる方が消費税額が抑えられるため、適格請求書発行事業者と積極的に取引するインセンティブが働くと考えられます。

そのため、現状免税事業者として活動している事業者にとっては、クライアントとの取引を継続するために、適格請求書発行事業者(つまり、免税事業者から課税事業者となる)となる圧力が働きます。

今まで免税であった事業者が課税事業者になると、今までなかった消費税の負担が発生することや、消費税申告のためにシステム対応をさせること、申告方法の習得等が必要となります。
そのため、適格請求書等発行方式となった場合、免税事業者にとっては多大な負担がかかります。

システム対応面での負担

システム対応面で大きな負担となりそうなのは

・端数処理の制限
・立替金精算書の発行

となるかと思います。

端数処理の制限

1点目の「端数処理の制限」について説明いたします。
前述した通り、端数処理は適格請求書ごとに1回と決められています。
企業によっては、経理システム上では複数の伝票をまとめて請求書として作成することもあると思いますが、その場合でも端数処理は1回までと決められているため、システム改修が必要となる場合があると考えられます。
おそらく多くの経理システムでは、それぞれの伝票を起票した時に消費税額を算出していると思われます。そのため、複数伝票をまとめて請求書を発行した場合に、伝票ごと(あるいは明細ごと)に端数処理をしていることになり、適格請求書等保存様式の要件を満たさなくなります。
このシステム改修は請求書自動発行システムのみではなく、経理システムそのものの改修も必要となる可能性があるため、大規模になる可能性があります。

立替金精算書の発行

2点目は立替金精算書の発行に関する改修です。
おそらくほとんどの企業が、現状のままでは「立替金精算書」をシステムから発行するのが不可能ではないかと思います。
なぜなら、立替請求する企業が請求書をシステムから発行する時、「立替金」勘定で請求書を発行します。
立替金は自社の消費税申告に影響しないため、立替金に対して特に消費税に関する情報をシステム登録していないのが現状なのではないかと思います。そのため、請求書自動発行システムで発行した場合、消費税の情報がない総額だけの「立替金精算書」が発行されてしまい、立替を受ける側の仕入税額控除ができなくなってしまうという問題が生じます。
この部分でも、各企業は大幅なシステム改修を迫られており、大きな負担となると予想されます。

まとめ

長々と書いてきましたが、これまでの内容をまとめたいと思います!

・今までは請求書を作成するだけで仕入税額控除できた!
・2019年10月1日から区分記載請求書等保存方式となり、仕入税額控除の要件が厳しくなった!
・2023年10月1日から適格請求書等保存方式となり、より厳しくなる。これらの対策・制度の検討が必要になりそう!

とりあえずは区分記載請求書等保存方式への対応で各事業者が手いっぱいになるかと思います。
しかし、適格請求書等保存方式への対応も課題が山積みとなっているため、早めの対応が必要となりそうですね。

以上、ありがとうございました!

 


第3弾はこちら!
消費税の軽減税率がややこしい!ことについて記事にしています。

また、消費税率変更に伴う経過措置についても以前記事にしています!
よろしければご覧ください!