のれんの減損って?DeNA2019年度第3四半期決算を解説します

経済

こんにちは!なすのつくだにです!

今回は少し前に話題になったこのトピックについて書いていきたいと思います。

DeNA、2019年度第3四半期決算は赤字に

このトピックの概要を書くと、

・DeNAは2019年度第3四半期決算を発表。501億円の赤字となり、上場以来初めて最終赤字になった。
・最終赤字になった原因を大きく見ると、海外のゲーム会社、ngmocoに対するのれんの減損損失の計上。
・また、法人税等調整額についても76億円を計上した。

といったものです。
……専門用語が非常に多くて、パッと聴いただけでは訳がわからないですね笑
今回の記事では、のれん」「減損について説明していこうと思います。

(※「法人税等調整額」については、また複雑な考え方になるので別に記事を書こうかと思っています。)

のれんって?

まず、「のれん」って何?といったところから説明しようと思います。
「のれん」とは、企業を買収したときに発生する超過収益力のことを指します。

お店の軒先にぶら下がっている「のれん」はそれ自体に価値はありませんが、そこに書かれている屋号はブランド価値を有しています。そこから目に見えないもの(→つまり買収することによる超過収益力)に対する投資を指す言葉としても「のれん」と呼ぶようになりました。

この「のれん」ですが、会計上は「企業は買収することによるシナジー効果などの総資産価額を超えた能力があると考えて買収しているはず」という考え方に基づき、目に見えないものですが資産として計上します。

減損って?

次に「減損」についても簡単に説明いたします。
減損は資産の価値が低下したと判断した場合に会計上損失を計上することを言います。

資産は基本的には「将来にわたって企業に便益をもたらす」と考え、投資をして取得するものであると考えられます。つまり、企業は将来的には資産によって収益が発生することを見込んでいるという前提があるんですね。
でも、常に資産が企業が思っていた収益をあげるとは限りません。そのため、投資額より収益力が低下していると判断した場合は減損損失を適用するという考え方になっております。
この際、キャッシュを生み出す最小単位である資産のかたまりである「資産グループ」ごとに減損損失を判定・測定・計上します。

※減損を判定・測定・計上には細かく基準が定められているのですが、ここでは割愛させていただきます。

のれんの処理は日本基準と国際基準で違う

この「のれん」なのですが、なんと日本の会計基準(J-GAAP)と国際会計基準(IFRS)で処理の仕方が違うんです。
日本は現在、日本会計基準と国際会計基準のどちらも使用することができます。
その違いについて、これから説明していきます。

日本基準の場合

日本基準では、「超過収益力は買収から時間が経つにつれて逓減していくだろう」という考え方から、20年以内で規則的に償却を行います。
合併した当初は真新しさがあるために超過収益力が発生しています。しかし時間が経つに連れて真新しさはなくなっていくため、次第に超過収益力が無くなっていくものだ、と考えているのですね。「合併した効果は段々薄れていくだろう」という考え方は、感覚としてはわかりやすいですよね。

国際基準の場合

一方、国際基準では、のれんの価値の測定を毎期行う「減損テスト」を行い、価値がなくなったと判定されたら減損損失を計上するという処理を行います。
こちらは、国際基準ではのれんを「ブランド価値分に投資した資産」という一面に注目しています。そのため、上記の「減損損失」の項にも書かれた通り、投資額に見合わないブランド価値となったと判断した場合に減損損失を計上するという処理になります。

日本基準では定額で費用が計上されるのに対し、国際基準ではある時に一気に費用が計上されるという処理になります。
使っている会計基準によって、利益が異なってしまうんですね!

DeNAのケース

さて、今回のDeNAのケースでは、のれんの減損損失を計上しています。つまり、DeNAは日本基準ではなく国際基準を採用しており、そのためにのれんの収益性がないと判断し減損損失を計上したということになります。

ちなみに、DeNAは2012年度から国際会計基準を採用しております。当該のれんの減損損失を計上したngmocoは2010年に買収した海外のゲーム会社です。

DeNAは2010年度に買収した時に、のれんを均等償却する資産として計上しています。

5.発生したのれんの金額、発生原因、償却方法及び償却期間
ア.発生したのれんの金額
313百万米ドル
イ.発生原因
主としてngmoco, LLCの今後の事業展開によって期待される超過収益力であります。
ウ.償却の方法及び償却期間
12年間にわたる均等償却

https://ssl4.eir-parts.net/doc/2432/yuho_pdf/S0008PY8/00.pdf
2011年3月期 有価証券報告書より引用

 

その後、2012年度に国際会計基準を採用した際に、償却を停止して毎期減損テストを行う方式へ変更されました。

6 IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項

(のれんの償却に関する事項)
日本基準において、のれんの償却についてはその効果の及ぶ期間を見積り、その期間で償却することとしておりましたが、IFRSではIFRS移行日以降の償却を停止しております。 この影響によりIFRSでは日本基準に比べて、のれん償却額(販売費及び一般管理費)が前連結会計年度2,573百万円、当連結会計年度2,913百万円減少しております。

https://ssl4.eir-parts.net/doc/2432/yuho_pdf/S000DS8V/00.pdf
2013年3月期 有価証券報告書より引用

 

しかし、買収したngmocoは思うような収益をあげることができず、2016年に解散・清算をしてしまいます。そして、2019年度の第3四半期に減損テストを行った結果、こののれんに対しての収益力が低下していると判断し、減損損失を計上することとなったということです。

ゲーム事業における直近の業績動向や事業環境等を鑑み、当第3四半期連結累計期間にゲーム事業全般の事業計画について見直しを行いました。
(中略)
その結果、回収可能価額である使用価値が9,565百万円となり、帳簿価額を下回ったことから減損損失を46,916百 万円認識しております。

https://ssl4.eir-parts.net/doc/2432/tdnet/1791108/00.pdf
2020年3月期第3四半期決算短信より引用

 

時系列を整理すると、

・2010年: ngmocoに対するのれんを日本基準に従って定期償却する形で計上
・2012年: 国際会計基準への変更に伴い、のれんも償却を止め減損テストをする形に変更
・2016年: ngmocoが解散・清算
・2019年: のれんに対する減損を計上

という流れになります。

なぜ今期に減損損失を計上した?

今回のれんの減損損失を計上したngmocoは2010年に買収した海外のゲーム会社ですが、この会社は2016年に解散し清算することを発表しています。普通に考えれば解散した時点でこの会社に対する収益性は無くなっているため、2016年に減損損失が計上されるのでは?と思えてしまいます。
一方、実際に減損損失は2019年第3四半期に計上しています。なぜ2019年度に減損損失を計上することになったのでしょうか?

こちらはDeNA2019年度第3四半期決算のQ&Aで回答されておりました。

【Q8】 のれんの減損損失を計上していますが、買収した会社が見通しどおりにならなかったのはなぜでしょうか。また、どのようなタイトルの減損損失を計上 したのでしょうか。
【A8】 2010 年に、当時のプラットフォーム戦略にのっとり、米国で ngmoco, LLC を 買収しましたが、2016 年に当該会社を含む海外子会社を解散し、清算することを決め、公表しています。当社の連結決算は IFRS に準拠していますが、当社では、ゲーム事業全体を資金生成単位として認識しており、ゲーム事業で 認識した 483 億円の減損損失について、最初にのれんの帳簿価額を減額し、 次にソフトウェア等の帳簿価額から減額しています。

https://ssl4.eir-parts.net/doc/2432/ir_material/133324/00.pdf
より引用

減損損失を計上する前段階で、減損の兆候があるかを判断する必要があります。この減損の兆候の判断は、キャッシュを生み出す最小単位である資産のかたまりである「資産グループ」ごとに行います。
このケースで考えると、ngmoco単位で見れば解散・清算を行なった2016年に減損を計上するべきだと思われます。しかし、ゲーム事業全体で1つのグループだと考えて判断していたので、減損損失の計上がずれ込み2019年度第3四半期になったということのようです。

減損損失の計上時期をずらすことはある程度できそう

減損損失の計上がずれ込んだ原因である「資産グルーピング」ですが、これはある程度各企業の判断に委ねられているため、減損損失をある程度調整できる要因にもなっていると考えられています。(実際は継続性の原則等があるので、毎期毎期いじることはできませんが、)今回のように大きいグループを形成して兆候の判断をすることで減損損失をある程度回避することは可能だと思われます。
減損損失は資産グルーピングに限らず企業による試算の範囲が広いので、投資家に対して適切な開示になっているか?というのは疑問に思うこともありますね。
(例えば、倒産した企業について、グルーピングを適切にしていれば倒産の兆候が先に分かったのではないか?など)
今回のケースもグルーピングを大きくすることで減損損失の計上期がずれており、これが特に2016年の決算が投資家にとって適切な開示となっていたのかという部分と、こののれんに対する「減損テスト」をこれまで通していた監査には疑問が残るところです。

まとめ

色々書いていきましたが、まとめようと思います!

・DeNAの赤字の原因はのれんの減損損失
・のれんの減損損失は日本基準では発生しない処理!
・資産グルーピングにより減損の発生がずれ込んだ(ずれて良いのか?)

以上、ありがとうございました!